従来のマーケティング本では、顧客のニーズや市場分析に重点を置くことが多いのに対し本書ではヒトの進化に基づいた根源的な欲求に焦点を当てているのでとても新鮮。解説とワークシートが充実しておりすぐに実践しやすい構成になっているのでとても読みやすい。
さらに身近なケーススタディが多くあり、知識欲がある方全般にお勧めできる非常に良い本です。
本書の構成は
Prologue ヒトの欲望を科学する、たった1つの考え方
Stage1 人類の欲望を生み出す8つの本能
Stage2 “刺さる本能"を見極める2つの手法
Stage3 “刺さる本能"の種類を増やす7つの問い
Stage4 ユーザー体験をデザインする62の技法
Epilogue 本能ダッシュボードで、行動を起こす
となっております。
目次を見ただけでも面白そうですよね。それでは個人的に面白かった点を以下にメモっときます。
ヒトが持つ究極の"モチベーション"は2つだけ!!
Stage1では、ヒトの最奥にある本能システムは実は2パターンしかないことが述べられております。
・生殖本能:自分の遺伝子を後生に残したい欲望
・生存本能:自分を長生きさせたい欲望
この2つが重要であるのは直感的に理解しやすいんじゃないでしょうか。生殖本能は全生物の根幹であり、生存本能は生殖チャンスを増やすためのものです。「生物個体は遺伝子の乗り物であり、遺伝子が自身の複製をより多く残すための生存機械なのだ!」というオモシロ仮説もあるんで、詳しく知りたい方はリチャード・ドーキンス先生の著書『利己的な遺伝子』をお読みください。
8つの基礎本能と32の二次本能
しかし本能のパターンを2つだけに絞るだけではあまりにシンプルすぎて消費者の分析には使いづらいですよね。そこでこの2つの究極本能から派生する8つの基礎本能と32の二次本能が紹介されています。
基礎本能1.属する
- 孤独の回避自分を受け入れてくれるコミュニティに入りたい
- 懐古の増幅昔を思い起こして懐かしい感情を味わいたい
- 分配の欲求仲間や好きな人に、自分のものを分け与えたい
- 周知の探索周囲の人間が何を考えているかを知りたい
基礎本能2.決する
- 創造の意欲問題を創造的に解決し、課題を達成したい
- 希望の保持未来の可能性にポジティブな感覚を持ちたい
- 自由の承認自分の行動を自分で決めて行動したい
- 才能の発揮生まれ持った才能を活かしたい
基礎本能3.物語る
- 因果の探求世の中の物事に深い意味を見出したい。意味を感じて生きたい
- 娯楽の堪能嫌なことを忘れてストーリーを楽しみたい
- 不明の解決理解できないことの答えを見つけたい
- 自己の定義自分がどのような人間なのかを明確にしたい
基礎本能4.安らぐ
- 信頼の確保やり取りする相手や情報が良いものであることを確認したい
- 不安の軽減より安心した気分を味わいたい。秩序や保護してくれる存在が欲しい
- 危険の回避病気や事故などの肉体的な危険を避けたい
- 単純の欲求複雑な物事をシンプルにして欲しい
基礎本能5.伝える
- 個性の主張個人的な嗜好、価値、およびスタイルを表現したい
- 魅力の誇示自分が好ましい人間性や知性を持った人物だと伝えたい
- 象徴の確保何か自分の特性を代表してくれるようなシンボルが欲しい
- 身体の改善衣服やルックスなど、外見の魅力を高めたい
基礎本能6.進める
- 没頭の体験何かに没頭したい。やりがいを得たい
- 習得の前進何か役に立つスキルや知識を手に入れたい
- 勝利の実感目標を達成した感覚を味わいたい
- 生産の確認自分の才能や強みを生かして優れた成果を上げたい
基礎本能7.有する
- 多様の確保バラエティに富んだものや情報が欲しい
- 感覚の報酬五感を喜ばせるような、純粋に感覚的な快楽を満たしたい
- 希少の獲得珍しいもの、世の中に少ないものを手に入れたい
- 代価の削減無駄な金と時間、労力を節約したい
基礎本能8.高める
- 自信の改善もっと自分の価値に自信を持ちたい
- 敬意の追求周囲から肯定的な評価を得たい。他人からあがめられたい
- 勢力の増大周囲に自分の影響をおよぼしたい
- 社会の改善世の中や仲間のコミュニティに良い影響を与えたい
ここで押さえておきたいポイント
- 本能の強さは人それぞれだが、状況や環境によって変化する
- これらの本能が行動につながる
1つ目のポイントについて、皆さんも心当たりがあるのではないでしょうか。私たちはそれぞれ、特定の基礎本能が強い傾向を持っています。そして、置かれた状況や環境によって、その強弱は変化します。重要なのは、これらの基礎本能が、私たちの行動に無意識に影響しているということです。
そして、商品やサービスの
- 本能を刺激する要素が強いほど熱心なファンを生む
- 本能を刺激する要素が多いほど幅広いファンを生む
ということになります。例えばX(旧Twitter)やInstagramなどのSNSは「属する」「高める」「伝える」といった基礎本能に訴求する傾向にあります。
逆に考えると、「この商品がヒットした理由はこれだったのか!」と分析することもできるので、アニメやマンガなどの作品のレビューに使えるなーと思いました。
読んだ後に、モノの考え方が変わるのでオススメの一冊です。
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